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yosh-ash’s Space

言葉・音楽・好奇心

ピーター・チャン監督の『ラヴソング』とテレサ・テンの「甜蜜蜜」

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1996年のピーター・チャン監督作品『ラヴソング』。原題は、テレサ・テンの曲「甜蜜蜜」から。映画の主題歌になっている。90年代半ばの香港らしい香港映画だ。主役の2人(レオン・ライマギー・チャン)が良い味を出している。この時代、ピーター・チャンたちが立ち上げた映画製作会社の電影人製作有限公司(UFO)の功績は大きかったと思う。映画を観ている側も、後に映画業界へと身を置く人々にもね。

↓ この記事の補足(追加)

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ピーター・チャン監督について

主役のレオン・ライマギー・チャンの話は横に置いておく。ピーター・チャンがUFO以前に所属していたゴールデン・ハーベストも長くなるので割愛。監督作品にしぼってみる。まずは『ラヴソング』が公開された当時の香港電影金像奨(香港のアカデミー賞)を受賞した作品を挙げてみる。

最優秀作品賞


始まりは1991年の『欲望の翼』(ウォン・カーウァイ監督)だと思う。『つきせぬ想い』(イー・トンシン監督)は最優秀主演男優賞と最優秀新人賞以外を総ナメする。ちなみに最優秀主演は『八仙飯店之人肉饅頭』のアンソニー・ウォン。その前年は『愛人/ラマン』のイメージをぶっ潰してくれた、『黒薔薇VS黒薔薇』のレオン・カーフェイだった。ものすごく好きだけどね、『黒薔薇VS黒薔薇』。

つきせぬ想い』に主演していたのがアニタ・ユン。ストーリーは、日本のドラマで言えば『赤いシリーズ』か、その後の韓流や華流ドラマみたいな雰囲気が流れていた。そのアニタ・ユンに目をつけたUFOが映画を撮ったのがピーター・チャン監督『君さえいれば/金枝玉葉』。これも似たように「そんな展開あるかよー」とツッコミ入れたくなるのだけれど、レスリー・チャンの演技で薄まっているんだよね。

ピーター・チャンの主な作品(1990年代半ば)

  • 1994年 『君さえいれば/金枝玉葉
  • 1996年 『ボクらはいつも恋してる! 金枝玉葉2』
  • 1997年 『ラヴソング』


映画『ラヴソング』は突然につくられたわけでなく、それ以前に下地があったということ。もちろん、時代背景として1997年の香港返還が色濃くあったのは想像できる。幾年もの月日が流れたから言える話になるんだろうね。映画だけでなく、他のジャンルでも消えていくであろう現在の香港を何らかの形で残しておきたかったような気がする。

アジアの歌姫、テレサ・テンについて

映画『ラヴソング』には挿入歌として「長崎は今日も雨だった」と「グッド・バイ・マイ・ラブ」がつかわれている。少しだけど、この曲が流れるシーンは醒める。他に曲があっただろうに……と思ってしまうんだよね。本当なら、素晴らしすぎるカバー曲「何日君再来」を前面に出しても良かった。そのあたりは事情があったのかもしれない。

日本でのテレサ・テンは過小評価されている。それは今でもだ。アジアの歌姫。そんな言葉では語り尽くせない影響力を民衆に与えていたのだから。どうしても、日本では「演歌歌手?」みたいな反応が多い。「つぐない」や「愛人」、「時の流れに身をまかせ」のイメージが貼り付いているんだろうね。実に惜しい。詳しくは有田芳生さんの名著「私の家は山の向こう」を読んでくだされ。

私の家は山の向こう―テレサ・テン十年目の真実 (文春文庫)

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それじゃ、テレサ・テンのベストは?と尋ねられたら、間髪入れずに即答する。『』。1983年に発表されたアルバムだ。日本でも再販を繰り返している。何回、何度となく聴いても飽きないんだよ。ものすごく耳心地が良いのに、しっかりと頭に染み付く。名盤だと思う。いや、名盤だと断言するよ。

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次にアジアの歌姫と言われたのはフェイ・ウォンだった。1995年『菲靡靡之音』でテレサ・テンのカバー・アルバムを出している。皮肉な運命なのだけれど、テレサ・テンは1995年に天国へと消えた。今も「但願人長久」を始めとする収録曲はさまざまなアーティストにカバーされている。


王菲 - 但願人長久 (官方版MV)

 

映画『ラヴソング』には、ある時代の香港を描いた佳品だ。たぶん、この映画を観たくなる衝動は、過去を振り返ろうとする自分を抑えるための条件反射かも?……と思うことがある。現実逃避とは少し違う。木陰で一休みしているような感じだ。でも、たまには立ち止まることも悪くないよね。それが前に進む、束の間の休憩なら。

 

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