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yosh-ash’s Space

言葉・音楽・好奇心

「交響詩篇エウレカセブン」- 音楽マニアをくすぐるサブタイトルたち

anime music prose

 

2005年に放送されたアニメ「交響詩篇エウレカセブン」では過去のアニメだけでなく、映画やSF小説、漫画、テクノ系音楽へのオマージュが散りばめられていた。

第1話のサブタイトルは「ブルーマンデー」。ニュー・オーダーの大ヒット曲「ブルー・マンデー(Blue Monday)」から。いきなりのスタートだ。

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サブタイトルで最も象徴的だと思われるアーティストは初期デトロイト・テクノを支えたジェフ・ミルズ


80年代から活躍しているジェフ・ミルズ

第5話と第30話に曲名が使われていた。ジェフ・ミルズは初期デトロイト・テクノを支えたアーティストの1人だ。現在はデトロイトを離れ、ミニマルテクノをハードにしたハードミニマルに走っている。

アニメ「交響詩篇エウレカセブン」のストーリーについては一切、触れない。簡単な分析ぐらいにおさめる予定だ。本筋のネタバレは面白くないもんね。

オマージュ。先人やその作品への尊敬をこめて、自分の作品にそれを取り入れること。しばしば、そんな意味で使われる。たしか、フランス語だったかな。リスペクトとは、かなり近い意味合いと思っていい。

例えば、映画界であれば、ブライアン・デ・パルマ監督の「殺しのドレス」はアルフレッド・ヒッチコックの「サイコ」へのオマージュで満ちあふれている、などといった言い方などで。


サブタイトルで最も多く使用されているアーティストはTB-303を駆使したアシッド・ハウスのユニットであるハードフロアHardfloor

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サブタイトルで最も多く使用されているアーティストはハードフロアHardfloor)だ。ジェフ・ミルズがアメリカであったのに対して、ハードフロアはドイツ出身のテクノ・ユニット。高い身長のオリバー・ボンツィオと、低いラモン・ツェンカーのデコボコ・コンビってやつ。

功績としては、一度は消えたローランドのTB-303を駆使したアシッド・ハウスを、1990年前半に復活させたことで評価されている。

1993年に発売された『ティービー・リサシテーション(TB Resuscitation)』はTB-303の中古価格が上がったとも言われている名盤。代表曲の6曲目「アクペリエンス・1(Acperience1) 」もサブタイトルに使われている。

計5回、サブタイトルとして、ハードフロアの楽曲名からとられているようだ。他のテクノ系で使用されたアーティストとしてはデリック・メイ、リッチー・ホゥティン、田中フミヤ、808ステイト、ケミカル・ブラザーズなどがいる。一言で豪華だな。

オマージュ。ひとつ間違えれば盗作だが、この手法をうまく消化されていれば、それは次世代への架け橋となる。「なるほど、この元ネタはこの作品なのか、一度、観てみよ……」。

こんなふうにして、音楽を含めた芸術は引き継がれてきた。


前半のクライマックスともいえる第26話のサブタイトルは、オアシスの「モーニング・グローリー」!

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交響詩篇エウレカセブン」で評価の高いひとつがこの第26話。最もキュン度が高い回と言われている。全50話なのだけど、これが前半のピークだった。第26話のサブタイトルは「モーニング・グローリー」。言うまでもなく、このサブタイトルはオアシスのアルバム名であり収録曲でもある。いわゆる名曲だな。

オアシスのアルバムで最も売れたのが、この『モーニング・グローリー(Morning Glory)』だった。これを前半の最も美味しいところにもってきたセンスはいい。

この他にも、広義の欧州ロック系を使っている回がある。例えば……。

プライマル・スクリームの、ロックンロールとアシッド・ハウスの混ぜた超名盤『スクリーマデリカ(Screamadelica)』の「ハイアー・ザン・ザ・サン」(第10話)。

ビョークの再出発となる、現在のビョークが世界的に名前を知られることになった『デビュー(Debut)』1曲目の「ヒューマン・ビヘイヴュア」(第15話)。

このあたりを選んでいるセンスはなかなかやるな、と唸ってしまう。

 

後半のクライマックスともいえる第48話のサブタイルは「バレエ・メカニック」!


もうひとつ、高い評価を受けているのが第48話だろう。第26話がキュンなら、この回は泣きの回だ。第26話が「男の子」回なら、第48話は「女の子」回になる。後半のクライマックスともいえる第48話のサブタイルは「バレエ・メカニック」。

「バレエ・メカニック」の元ネタは2つ考えられる。

1つは、映画「バレエ・メカニック」(フェルナン・レジェ監督)。フランスの画家なのだけど、1924年に実験的なモノクロ映画を撮った。今、観ても、刺激の鮮度は落ちていない。

もう1つは、坂本龍一の曲「バレエ・メカニック(Ballet Me'canique)」だ。6枚目のソロ『未来派野郎』に収録。この曲名は初期YMOように映画からではなく、ジョージ・アンタイルの代表曲からインスパイアされたらしい。

おそらく、元ネタは坂本龍一の方だと勝手に思っている。

この坂本龍一の曲。元は「WONDER TRIP LOVER」(岡田有希子)に提供したものをセルフカバーしたものだ。後に、中谷美紀の「クロニック・ラヴ」として再度、カバーされた。なんか、複雑だな。TVドラマ「ケイゾク」の主題歌としてヒットしたので、ある世代には聞き覚えのある人も多いと思う。

少し脱線する。

個人的に「ケイゾク」好きで、「ケイゾク2」と言われるドラマ「SPEC」も期待を裏切らない出来だった。どちらも毎週、欠かさず見ていた。そして、どんなドラマや映画を観ても、中谷美紀=柴田(役名)のイメージが未だに抜けない。

「クロニック・ラヴ」は『私生活』(中谷美紀)に収録されているので、こちらの方でぜひ。エレクトロニカ寄りの良質なアルバムなので、一時期、よく聴いていた。

 

SFならではの専門用語にも音楽マニアをくすぐる仕掛けが数多く、散りばめられていて萌える!

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交響詩篇エウレカセブン」はジャンル的にはSFロボットアニメになる。少し違和感があるけれどね。ということでSFならではの専門用語が出てくる。そこにも音楽系の元ネタが含まれていて、さらに、くすぐられてしまう。

ヒト型の戦闘マシンが出てくる。名前はLFOLFOシンセサイザー用語だ。よくツマミに書いてある。ただ、LFOはテクノ・ユニット名でもあるので、こちらからの引用かもしれない。ユニットの1人、マーク・ベルはビョークのプロデューサーとして最も名前を知られているのかな。

また、軍用のLFOはKLFだ。KLFといえば、農場みたいなジャケット『チル・アウト(Chill Out )』を出したザ・ケイエルエフ(The KLF)。

主人公とヒロインが搭乗するLFOにはニルヴァーシュと名付けられている。もちろん、仏教用語の涅槃だけど、やはり、ここはニルヴァーナをもじったものだろう。

その他に出てくるLFOの名前が、「type B303 デビルフィッシュ」「type R505」「type R606」「type R808」「type R909」「SH-101」「type MS10」「type MS20」「VC10」「SL-1200MkI」「SL-1200MkII」。

元ネタは…それぞれ、ローランド社のベースマシンTB-303や、リズムマシンTR808などのTRシリーズ。同じくローランドのキーボードSH-101。コルグシンセサイザーMS20。テクニクスのレコードプレーヤーであるSL-1200シリーズ。

まだ、ある。

過去に世界を襲った大災害の名前が「サマー・オブ・ラブ」。途中から出てくる悪役?が目指すのがその再来の「セカンド・サマー・オブ・ラブ」。これ1960年代半ばと1980年代終わり頃に起こった音楽の絡んだムーブメント、そのものだ。

まだ、まだ、あるのだけど、このあたりで止めておく。キリがない。


第1話と幻の第51話が繋がっていて、第50話(最終回)の挿入歌にも音楽マニアをくすぐる仕掛けが!

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挿入歌にも、うまい仕掛けが刷りこまれている。

第1話を始めとして何話かに同じ曲が使われていた。SUPERCARスーパーカー)の「STORYWRITER(ストーリーライター)」。アニメ放送前に解散してしまった。

その後、元メンバーの中村弘二(ナカコー)は続編の「エウレカセブンAO」で音楽担当をする。しっかりと自分の曲を、また、挿入歌にしている。「エウレカセブンAO」そのものは前作を超える出来ではなかったのが残念だったけどね。

第50話「星に願いを」では「虹」(電気グルーヴ)が挿入歌として使われていた。5枚目の『DRAGON(ドラゴン)』最後の曲でシングルにもなった。ドイツのレーベルからもリミックス盤が発売されている。

とても、美味しい場面での挿入歌だった。

これ、さりげなく、第1話と繋がっている。電気グルーヴのメンバーである石野卓球が「ブルーマンデー」好きで、ピエール瀧は卓球の家でこれを聞いて、まさしく身体に電気が走ったそうだ。

この曲がなければ出会いなんてなかった可能性もあった。電気グルーヴは存在しなかったかもしれない。なんと素晴らしい演出。最終話に「虹」を選んだスタッフに拍手を捧げたい。

実は、第51話がある。第50話の続きではない。元々はファン向けのイベント用に作られた総集編みたいなものだ。2012年、続編の放送前に宣伝を兼ねてテレビでも放映された。これも、さらに第1話と繋がっている。

サブタイトルは「ニュー・オーダー」。

もう、「交響詩篇エウレカセブン」のスタッフ、遊びすぎ。やり過ぎとしか言いようがない。このオマージュは音楽マニアへの挑戦状のように見える。決してキライじゃない遊びだけどね。こういう遊びが実現できる「やり過ぎ」……素敵すぎる。

 

愛がなければオマージュはできない


このアニメのテーマは愛だ。しかも純粋な愛。ピュアな感情を忘れてはいけないことを思い出させてくれる。物語も仕掛けも。日本語にすると照れくさい「愛」だけど、時にはストレートに向き合わないとね。

 

 

Organizer:yosh.ash

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